今建築が目指す未来とは

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「交通費はASJが負担して、建築家が全国どこへでも出かけていくというシステムと、各地の工務店がASJのスタジオを運営して、施工とメンテナンスを担当するという仕組み。この2つがうまくかみ合っているのがすごいところ。他の追随を許さないところですね」
丸山
「ありがとうございます。おかげさまで。でもそうなるまでには、多くの課題がありました」
井内
「そうそう。工務店の質があまりにも低かったんだ」
丸山
「戦前には工務店と言えば地域の大工さんのことでした。日本の優秀な伝統技術を持ち、地元を知り尽くした大工さんが家を建て、メンテナンスしていたから、何ら問題はなかったんです。

ところが戦後の高度経済成長の中で、住宅産業という経済優先の方法論が入ってきてからは、状況がガラッと変わってしまった。ハウスメーカーが日本中を席巻し、工務店はその下請けに回りました。それだけでは食べていけないから、公共事業もやれば、ビルやマンションも建てる、たまに建築家の仕事も請けるといった何でも屋さんに、ほとんどがなってしまったんですね」
井内
「そこに輪をかけたのが建材メーカーだよね。地産地消の原則をぶちこわした上に、技術がなくても家が建てられる仕組みを作っちゃった」
丸山
「工務店が弱体化すると、建築家との仕事は嫌がるんですよ(※3)。施工管理が厳しいから」
井内
「そんな環境に飛び込んでいって、建築家との仕事を日常的にできる工務店を、全国に作った丸山さんて、すごいでしょ?よくやったなあと思うよ。僕が知っているだけでも、途中で投げ出したところがたくさんありましたからね」
丸山
「だいたい建築家というのが、井内先生を始め猛毒を持った人ばかりですからねえ(笑)。松阪や野茂みたいなボールがばんばん飛んでくるようなもの。そりゃ、捕れないよ。可哀想でしたよ」
井内
「どっちが可哀想なんだよ」(笑)
丸山
「井内先生にガンガン言われて、しょんぼりしているところに行って私が言うわけ。『あの人はまだ優しいほうだよ。こんなのでめげてどうするんだ』。それでまた気を取り直して頑張る、その繰り返し。でも何十件とやっているうちに出来てくるんですね。速い球が捕れるようになってくるんですよ」
井内
「そうそう。僕がよく仕事している香川の工務店。今ではものすごく楽しんで仕事をやってくれていて、これって自分のことよりもしかしたら嬉しいかもしれない」
第3ラウンドへ
※3 「工務店が弱体化すると、建築家との仕事は嫌がる」
建築家の仕事を請け負うと、素材、デザインともに細かいところまでこだわりが多く、また施工管理も厳しいということで、工務店が請け負う場合にはやり直し等のコストも含め見積もるのが慣例のようになっている。ASJやソラマドは、このコストをゼロにすることで、価格の低減を実現している。